おとなの心に効くはなし

『むささび星』を読みました。

九州、飫肥は杉の産地。

何百年も昔から、人々がこつこつと植えて育ててきた杉が
山一面に美しく並んでいます。
村の人たちは、杉といっしょに生まれ、育ち、年をとっていきました。

かつて、さし木にする若枝を摘み取るのは、
木登りの上手な若者たちの役目。
村祭りで杉の大木に登り、
一番早く、一番高いところにお札をつけてきた者が、
あくる年の春、杉の若枝を摘む役になります。

一番になった者が摘んだ穂は
根ざしがよく、育ちもよいといわれていたのです。

その村におかあさんと二人きりで貧しく暮らす太郎。
太郎は村祭りの木登り競争に子どもながら出ることにしましたが
まだ幼すぎてかわいそうに思ったのか、
神主さんは太郎に二度お祓いを授けてくれました。

太郎のおとうさんは太郎が小さいころに亡くなり
太郎が山で遊んでいると、
おとうさんの声が木の上のほうから
聞こえるように思えたのでした。

太郎は「むささび太郎」と言われるようになり、
何年もが過ぎていきました。

杉が、どこまでも美しく並ぶ山で生きてきた人たちの
くらしの歴史や、「働き歌」の響きが
作者・今西さんの心の中で醸成されてできた
悲しくも美しいおはなしです。

簡便に、速く、薄く、ということが
最善であるかのような今の世の中が、
ほんとうに人間にとって幸せなのだろうか?
と、ふと立ち止まって考えさせられます。

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人生をもうちょっと「まし」にしたいのに

神保町のブックハウスカフェで
ささめやゆきさんの本を集めて展示していました。
>>神保町のブックハウスカフェ

で、以前読んだ『ヴァンゴッホカフェ』を思い出しました。

ヴァンゴッホカフェでは、
お客たちにも魔法にかかるので、
そこで起こる不思議なできごとを
だれも不思議と思わない。

いるはずのない動物もいるし、
けんかしていたはずだけど仲直りしているし・・・

ある年のクリスマスイブ、
かつて劇場に出演していたスターが店に現れる。

いっしょに出演していた青年の写真を持って。
青年の背後には立派だった劇場が写っている。

老スターは生涯に一度の真の友情を知ったこの場所で
クリスマスイブを過ごすのです。

いろんな人が、ヴァンゴッホカフェの魔法をとおして、
自分のほんとうに大切なことに気づき、
そこへ戻っていきます。

だれもが、大切なことに気づくことはある。
現に個人的に日記を読み返してみたりすると
「けっこういいこと考えてるのにな~」と思う。

けれども、それを生活に「活かす」のは、難しいもんです。
なんでこれを
人生をもっとましにするために活かせないのかね~
と、つくづく思う。

ヴァンゴッホカフェへ行って
その魔法にかかりたい。
そうして、ほんとうに自分にとって大切なことに戻って、
つらぬきたい!

静かな文章を読んだあとに、
そういう悲しくも強い望みが湧いてくる作品です。

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